ユートピア 加賀の郷

ユートピア 加賀の郷

ユートピア 加賀の郷

ユートピア 加賀の郷北陸シリーズ最終回は「ユートピア加賀の郷」。「スッポン堂本店」の年末年始休みにしてやられ、「ハニベ岩窟院」を目指す途中に見つけた場所である。

田んぼが広がるのどかな風景に、金色に光る巨大な観音様を発見。というより、他に目立つモノがないので、見なかったことにできない。しかし金色の観音様というゴージャスなものは、加賀百万石のなごりか。

たどり着いてみれば、観音温泉ホテルと書かれた建物があるが人影がない。中途半端な生活感を残したまま、ホテルは閉鎖されている模様。それでも観音様のある「大本山加賀寺」の入場口へ向かって見ると、こちらは営業中。入場料は800円と書かれていたが500円でいいと言われ、渡された入場券は何故か団体共通拝観入場券。

ユートピア 加賀の郷ユートピア 加賀の郷山門をくぐって真っ先に目に飛び込んできたのは、先ほどの観音様。(大きいので山門の上に上半身が出ている)なんと全長73メートル。こんなに大きいのはもしかして日本一かと思いきや、観音様国内最大級は、宮城県にある仙台大観音の全長100メートル。上には上がいる。そして御利益は「子授け」。ということで、子供を抱いている。

大観音は中に胎内霊場というのがあり、入口には何故か発電機。この発電機で電気をまかなっているのか、必要最小限に抑えられた内部の照明は薄暗く、嫌な感じフルスロットル状態。

一歩踏み入れると、壁にギッシリ貼られた金色の観音様パネル。1枚3,000円で祈願した人の名前が書かれて、この内部に貼られているようだが、元の壁が見えないほどギッシリビッチリ。嫌な感じの正体はこれか。

薄暗い青と緑の照明が、金色の観音様パネルが貼らた壁、仏の数々に暗い影を落とす。人がいなくて、昼でも背筋が寒くなる重苦しい雰囲気。胎内霊場内は撮影禁止となっていたが、禁止されなくても写真を撮る気にはなれず。

1階と2階は、四国八十八札所、西国、板東、秩父百ヶ寺の各霊場、諸仏の礼拝所ということで、胎内の中央部分にある螺旋階段を軸とする内円と、外周に沿った外円にずらっと仏様が並んでいる。この夥しい数の仏様の意味するところは何かと言えば、本来なら四国八十八の札所を巡り歩かねばならぬところを、ここだったら全部一気にお参りできるという、忙しい現代人には画期的なシステムなのだ。

ユートピア 加賀の郷なんとなく息詰まりながらも、最上階の56メートル地点まで行けるという螺旋階段を上ってみる。小窓から外光が差し込んでほっとしたのも束の間、またもや壁には金色の観音様パネルがギッシリビッチリ。これがなんと延々と最上階まで続く。この夥しいまでの願い事が、この胎内霊場に渦巻いているような気がする中、迷い込んだ鳥が暴れたのか階段に羽根が散乱していて、まだまだ嫌な感じフルスロットル状態。

ぜいぜいしながら、最上階の小部屋へ到達。がらんとした部屋の片隅には、金色の大黒様、恵比須様、布袋様がいた。それだけ。小窓から外を覗いても、のどかな田んぼが広がる風景で特に言葉もない。帰りがけにドアの横にあるスイッチを見て、夜あの階段を延々上ってここの「スイッチを消しにくる係」にだけはなりたくないと思った。もしかしたらあの発電機は、ここへ来る手間を省くために使っているのかもしれないが。

大観音の裏にある、加賀寺三十三間堂へ。胎内霊場に比べれば明るいものの、ここも相変わらず薄暗い。
読経の声が静かに響き渡る全長40メートルの空間に、釈迦の生涯と仏教伝播がジオラマで再現されている。ただし、表の説明書きには「全長40メートルの世界最大のスクリーンが展開して、シンセサイザーによる壮重な音楽と、きらめく光彩の餐宴による"観音浄土"が出現いたします」と書いてあったのだが、見えるのはジオラマ、聞こえるのは読経の声のみ。どうやら動いてないらしい。

反対側の部屋には金色の観音様がズラリ。中尊千手観音立像を中央にして両側に各594体、合計1188体の千手観音立像が25段94列。最上段までの高さは13メートルと、なかなか圧巻で明るければ金ピカでゴージャスな感じがするかもしれないが、またしても薄暗いのである。

ユートピア 加賀の郷ユートピア加賀の郷大観音の横には、高さ10メートル、直径5メートル、重さ350トンという世界最大の梵鐘がある大梵鐘仏堂。鐘はもちろんのこと金ピカである。
この他にも本殿、不動尊堂、金色堂、瑠璃光殿となかなか見所満載な加賀寺だが、金ピカで派手な部分が多いだけに、人がいなくてがらーんとしていると余計に寒々と感じる。ちなみに金色堂、瑠璃光殿は改修中とのことで拝観不可。入場料が安くなっていたのはそのためか。お土産屋もあったが、閉まっていた。

さて、観音様の裏側に観覧車が動いているのが見えたので、行ってみると廃墟と化した遊園地があった。錆び錆びの鉄柱やら、荒らされて割れた窓、壊れた建物の一部が散乱した無惨な姿。

ユートピア 加賀の郷

ユートピア 加賀の郷

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ちなみに観覧車は、風に吹かれてものすごいスピードで動いていただけ。カタカタ、ギシギシと音をたてて回る観覧車を見ていると、加賀寺での重苦しい感じが更にパワーアップ。冬の北陸のどんより具合と、見事なコラボレーションだ。

1987年に、総工費280億円という巨額の資金をつぎ込み、複合レジャー施設として建設されたというユートピア加賀の郷。今ではホテル、遊園地は閉鎖され、巨大観音のある加賀寺のみが残る。あの寒々とした感じは、バブルの亡霊の仕業かもしれない。

ユートピア(どこにもない場所の意の造語) = 理想郷。理想の国。空想上の理想的社会。 [ 大辞林 第二版 ]

結局、この世の中にユートピア(理想郷)など存在しないのだと、しみじみ思い知らされる場所である。