ジャパンスネークセンター
日本は本当に温泉が多い。群馬県は「薮塚温泉」の近くに、ジャパンスネークセンターはある。何だかヘビがうじゃうじゃいるような、とにかく凄い場所を期待して梅雨の中休みに群馬県を目指した。
ところが、である。
徐々にスネークセンターに近づくにつれて、何だか嫌な予感がしてきた。東武桐生線薮塚駅の踏切のあたりから、もう既に「あれかな」と思わせる「白い観音様」が山の中腹にあるのがわかる。その手前一面は青々とした稲がなびく田んぼである。他には目立ったものはない。
「たぶんあそこなんだろうな。でも違っていて欲しいな。」そんな自分の思いを裏切るように、ヘビセンターにして、観音様。何だかなーである。
1Km先も見渡せるような田んぼの中に「ヘビセンター」の看板があった。いくつかある案内看板も「ヘビセンター」「ジャパンスネークセンター」と統一してない。何故かヘビに木枯門次郎が乗っている看板もある。どうやらヘビセンターの奥に三日月村というのがあり、そこは木枯門次郎の村らしい。よくわからない。
目指すヘビセンターは小高い山の中腹にあった。山のふもとには三日月村と共通のためか何故か関所があり、ここで入場料を払う。観覧券と書かれたチケットには「ジャパンスネークセンター」の下に財団法人 日本蛇族学術研究所と書かれている。財団法人だとは知らなかった。
しかし、入口のゲートを見て一気にゲンナリしてきた。錆びている...というよりさびれている。もう中に入らなくても、その辺にヘビがうじゃうじゃいそうな感じのところなのである。
入口で観覧券の半券をちぎってもらうと、さっそく先ほどの白い観音様がある。観音様の足下に蛇がとぐろまいている、白蛇観音なんだそう。基本的には虫類等の白というのは、アルビノ(変異種)なわけで、別に神の使いでも何でもないんですが、日本人はすぐ賽銭とかあげますね。どういうわけか。
見晴らし広場なる単なる空き地を横目に、急な坂を下りると左の看板が。何だかやっぱり、この場所全体にヘビがウロウロしているんじゃないかと思わせぶりな書き方である。
ここは大きく分けて「温室」と「野外飼育場」からなる。最初にヘビにお目にかかれるのは「大蛇温室」。大蛇ばっかりが、通路を挟んで左右の個室にいるが、ちっとも動かないので、ガラスをたたきたくなるのもわからなくもない。
写真に写っているのは「ダーナちゃん」と呼ばれるニシキヘビ。何でも誰かがペットとして飼っていたのが、入間川付近で散歩中に逃げ出し、大捕獲作戦の末につかまって、何故かヘビセンターに収まることになった模様。
密輸しようとして成田で見つかってそのままヘビセンターに送られた。などという結構訳ありのヘビもたくさんいる。
外に出ると「マムシ野外飼育場」。
どこにマムシがいるんだかってくらい、草花がぼうぼうとしている。よく見るとゴザがかぶせられた箱の中にうじゃうじゃいました。大蛇と違って結構うねうね動いていて、動きが活発。(写真左下の囲み)
他にも「シマヘビ飼育場」もあるが、みんな暑くて木陰に隠れてるか泳いでいるかで、あまり期待するほどみかけない。
しかし、この「キケン!」って書いてあるのも、なんだか説得力のなさそうな看板なのである。
よく夜道に「チカンに注意」てなのがありますが、それに近いものが。何よりも手書き、そして下手さ加減。この手のものは、逆にその行為そのものを促されるような錯覚に陥ります。
「タイワンコブラ」の大人と子供。あまり動かないヘビが多い中で、大人も子供も一番元気だった。
特に大人の方は、鎌首をもたげて構えの姿勢に入り、ちょっとでも動くと襲いかかってきた。ガラス越しだから怖くないけど。
ヘビセンターの寂れっぷりを物語るかのような「熱帯蛇類温室」。ワニガメとか大蛇とか数匹が大きなガラス張りの中にいるのですが、ふと振り向けばご覧のような物置状態の光景。隅に追いやられている恐竜が、哀愁を誘います。中二階には、追いやられなかった恐竜の模型がズラリ。
扇風機の後ろには「IDO取扱店」の看板もあって、もはやヘビセンターなんだか何なのかってわからない状態。
暑さとむなしさでかなりゲンナリした自分が次に入ったのが資料館。
何だか古い理科室のような匂いが充満していて、ちょっと薄気味悪く、とっても蒸し暑くて入る気にもなれなかった、空調もないこの資料館。中にあったトイレは出るものも引っ込むような具合で入るのを断念したし、置いてあった観葉植物もごらんの通り枯れてしおれているほど。
しかし、一歩踏み入れたら凄いものが目に入ってきたのであります。
そう、ヘビの交尾器(性器)の数々。やっぱり標本の王道はこれですね。
説明書きの「勘違い」が「甚違い」と書かれており、誰かに訂正されていたのが笑える。
左と同じくハブの交尾器(オス)
エラブウミヘビの交尾器。形が違う。
それではここで、ヘビの交尾器(生殖器)と交尾について学んできた知識をご紹介いたしましょう。親切な手書き図解つき。
ヘビの交尾器
ヘビのオスの交尾器は一対あるため半陰茎(ヘミペニス)と呼ばれています。これはトカゲも同様でこれらのグループの特徴の1つになっています。
陰茎は図のような形で交尾の時にはちょうど靴下を裏返すように反転して飛び出してきます。精液はこの表面にある溝を通って導かれます。実際の交尾では片側のものしか使われません。
ヘビが火にあぶられたりでびっくりすると、このペニスが飛び出してきて、これをヘビの足と勘違いする人もいます。
オス同様にメスも交尾期を一対あるわけです。
ということで、写真のようにメス1匹に対して、2匹のオスが交わってしまうという珍現象が起きることも。(写真はシマヘビの交尾)
ヘビの交尾というのは、何日間も合体したままで、更にヘビの精子は1回の交尾でメスの体内に2〜3年は生きているそうです。
もう、長いものには巻かれちゃいなさいって感じでしょうか。
とにかく、暑さも加わってかなり脱力させられた場所。オープン当初はかなり人出もあったと思われるが、今は施設はお世辞にもきれいとは言い難いし、あまり流行らなそうな場所なのである。
写真右奥の建物は、不老長寿の館。残念ながら閉まっていたが、まむしを使った健康酒やら粉末なんかが売られている場所らしい。横には手作り石鹸教室なんてのもあって、かなり頭が混乱する。何故ヘビセンターにして、手作り石鹸。
この不老長寿の館から2階の窓をガラガラと開け、写真を撮ってる自分を見ていた推定年齢95歳くらいの不老長寿予備軍の老人がいた。
思えばヘビセンターでは係りの人というのを、入口のもぎりのお姉さん以外全く見かけなかった。何となく「キケン」看板の意味がわかったような気がした。