明治大学博物館
明治大学にはギロチンなどの処刑具が展示されている、日本で唯一の刑事博物館がある。刑事法制を学ぶ学生のために資料の実物や模型を展示する意図で作られ、一般にも無料で公開されている。
大学に博物館があるだけでも洒落てるのに、更に処刑具の展示されてるとは!!・・・ということで、前々から行ってみたかった場所の一つだ。
刑事博物館は昭和4年に設立され、戦後に一時休館し昭和27年に再興。平成10年には大改装して再オープン。元々「商品博物館」「刑事博物館」「考古学博物館」だったものを、平成16年4月に商品部門・刑事部門・考古学部門の3つの部門(プラス大学史)で構成される「明治大学博物館」として、現在の場所に新たに開館している。
今回訪れたのは最新になって間もない、学生が休みのゴールデンウィーク期間中。観光地は混み合っても、オフィス街や学校付近はガラガラになるという、変な時期である。
明治大学のある駿河台は、予想通り人もまばら。十数年ぶりに訪れた自分には街並みはもとより、明治大学ってこんなだったっけ?!と思うぐらいの変貌っぷりであった。
博物館の入っているアカデミーコモンなど、ガラス張りの超近代的なものスゴイ建物である。周りには水が流れていたり、オブジェがあったりして、ムダに贅沢な空間が広がっている。
エスカレーターで地階へ。かなりシックな館内は、音もなく静か。常設展の案内に従って行くと最初は大学史。興味がないので素通りし更に階段を下りると、3つの部門が続けて展示されている
まず初めは商品部門。日本の伝統的工芸品である漆器、染織品、陶磁器などが展示され、原材料、部品、製造技法、製造工程がわかる。3つの部門のうち一番狭いスペースで、良く言えば日本の意匠表現の素晴らしさ、俗っぽく言ってしまえば観光地の工芸品自慢みたいな感じ。
そして、この博物館の目玉は、やはりコレだろうという刑事部門。
日本の罪と罰のコーナーは古文書やら、高札(罪人の罪状などを記して人通りの多い所に高くかかげた札のこと)などが展示されているだけだが、振りかえればギロチン・・・てな具合である。
江戸の捕者具のコーナーには、今では時代劇でしか見かけない十手に始まり、最近でも使われている刺又(さすまた)が展示されている。
不審者の侵入事件などが相次いで学校では、完備しているところもあるそうで、テレビで見た人もいると思う。江戸時代から現代にまで受け継がれている刺又。
今では警備用具のネットショッピングで買える。変な時代だ。
次は捕まえたら拷問。ということで、石川県の「熊坂ノ庄 スッポン堂本店」にあった拷問図通り、前身黒タイツの人形が石抱責やら釣責を再現して展示されている。リアルというより、表情がないだけに不気味さは増す。そして白状したら、懲らしめ。晒し首の箱や磔の柱などがあり、こちらは実際の写真がパネルになって貼ってある。
レプリカなのか、本物なのか、判断つきかねる処刑具もあり、百年ぐらい前に実際これで人が処刑されたのかも・・・と考えると、背筋がうっすら寒くなる。
そして、国内唯一の展示という処刑具、ギロチンと鉄の処女。
ギロチンは有名なので知っている人も多いと思う。一方の鉄の処女は、マントのようなモノを着た、その名の通り鉄でできた女性である。これは女性の中央部分が扉のように開くのでそこに処刑する人を押し込め、扉を閉める内側についた尖った棒が人に突き刺さるというしくみ。
ギロチンにしろ鉄の処女にしろ、仰々しい処刑具だ。そして処刑される人よりも、処刑する人の方がかなりの重圧と戦うのではないか。気の迷いがあると思い切りに欠けてしまい、中途半端に傷つけるだけになってしまうからだ。後世まで使われなかったのには、そんなメンタルな部分も関係しているんじゃないかと思う。
ちなみに、本場ドイツには中世犯罪博物館という、中世の拷問具を展示した本格的な博物館がある。
中世の拷問、処刑に興味のある方はそちらへ。
さて、最後は考古学部門。歴史の時間には最初に習う旧石器時代から縄文、弥生、古墳時代に至るまでの研究成果が公開されている。
埴輪やら石器、土偶などの展示がメインで、全体的に茶色っぽい感じだ。最大の茶色っぽさは、壁一面に貝がビッシリついている杉田貝塚。
これを見て思い出したのが、自分が中学生の時の話。
未来の考古学者達を混乱させるような間違った貝塚を作ろうと思い、貝を食べた後は必ず家の縁の下に捨てていた。ドンブリ2杯分ぐらい貝が積み上がった頃、大雪が降って縁側が壊れ、自分が作った間違った貝塚は壊れた縁側と共にあっけなく排除された。
その後、二度と貝塚を作ろうとは思わなかったが、今思えば、このくだらない計画に付き合ってくれたウチの家族は、どうかしていると思う。
一通り展示物はこんな感じだ。そしてこの博物館にはミュージアムショップもある。超目玉の鉄の処女Tシャツをはじめ、十手のついた携帯電話ストラップや、土偶マグカップなどが売られているのだ。これらは結構ないやげものだと思う。
都心の地下にひっそりと置かれている処刑具。真面目に学ぶ人にも、ちょっと興味をもった人にも、満足のいく博物館だ。