性神の館
東北道 宇都宮インター日光口からほど近い場所にある「性神の館」。
秘宝館系なんですが、あくまでも博物館。チケットの言葉を借りれば「日本と全世界の性文化・風俗を一堂に集めた楽しい性の殿堂」なのだそう。
ちなみに「楽しい性の」は、ATOK11で修飾語の連続と指摘されました。でも確かに「楽しい性の殿堂」ですから、別にいいんじゃないかと思います。
外観はどこぞの神社仏閣といった造り。向かい側のラーメン屋に家族連れが来たので、子供が「おかあさん、あの建物は何?行ってみたい!」と言うのを期待していたのですが、建物をちらっと見ると何も見なかったかのように、そそくさとラーメン屋へ入って行きました。食欲に勝る物は何もないのかもしれません。残念。
入口へ一歩近づくと、男性器を模したオブジェ。日本ではご神体として崇めることも多いので、ここでもしめ縄が巻き付けてありました。小さな橋を渡ると入口は女性器を模したオブジェになっており、要は割れ目から館内に入るわけです。こういった入口は他の秘宝館には見られない特長です。
ここも撮影禁止。 やはり秘宝物には撮影禁止がつきものです。
ですから、ここも自分の脳裏に焼き付けたイメージ画を使用しています
さて、入口を入ると迎えてくれたのは中年の男性。とっても元気も愛想もよく面白そうな人でした。最初に入館料を払おうとすると「ここは自分どもが館内をお話しながら案内するので、30分くらいかかります」とのこと。館内の前半部分をこの男性が、後半部分を女性が案内してくれるそうです。
時間には問題なかったので、さっそく案内していただくことにすると、今度は「どちらからいらっしゃいましたか?」と聞かれます。お客さんの居住している都道府県に応じて、その地にまつわる祭りやご神体について教えてくれる、なかなか細かい気配りがあるのです。
ところが「ごめんなさい。今、配線の修理をしていて...」ということで、通常の案内とは順序を逆に後半部分から案内してもらうことになったのであります。
館内の順路を逆にたどり、後半部分の初めと思われる部分に到達。早速、「性神の館」と書かれたはっぴを着た女性に展示物の説明をしてもらいます。展示物を指し示すために持っている棒の先には男性器、反対側は女性のおっぱいになっていて、最初は展示物よりもそちらに目を奪われてしまいます。
ちょっと欲しかったのですが、どうやらここのオリジナルらしく、おみやげコーナーにも売ってませんでした。
まずは壁一面に貼られた春画の数々。日本の有名な画家、葛飾北斎や北川歌麻呂といった巨匠も実は春画を描いていたというエピソード。売れないときにエロな仕事をするのは、どんな時代でも同じようです。
でも、デビュー作が成人映画だったりする人ほど、後々脚光を浴びているような気もします。ここで教えてもらえるのは春画の特長や見方。春画には珍しい強姦シーンもあります。
そして江戸時代に使われていたという性具。べっこうで作られたペニスケースや双方張り型、芋茎(ずいき)でつくられたリングなど、現代にもその姿を受け継がれている物が展示されています。べっこうは、熱が加わると柔らかくなるらしく、形が変わって気持ちがいいらしいです。
また、芋茎というのは読んで字の如く芋の茎なのですが、男性器の根本にリング状にした物をつけ、水分や熱が加わると締まって気持ちがいいらしいです。ちなみに、今でも薬局では芋茎を売っているそうなので、興味がある方は試してみてください。
他には、置物の底をみると女性器の形になっている物、皿の裏側に春画が描かれている物など、なかなか現代ではお目にかかれない貴重なものが展示されています。
ここで一番目を見張った物と言えば、左の図のようなもの。なんだか、燭台みたいにも見えますが、にゅっと突き出しているのは疑似男性器。下が受け皿のようになっています。
これは、昔の文献をもとにしてわざわざ作った物で、女性器からでる分泌物を搾取するための器具なのだそうです。でも一体何のために?素朴な疑問は頭を駆けめぐります。
案内の女性は淡々と説明を続け最後に「火傷に効くらしいです」と教えてくれました。しかも「これを試した人は今までに8人くらいいます」と何事もなかったように続けました。わざわざ作った物を更に試した人がいる。さすが「性の殿堂」です。何やら奥が深いです。
ここで追記。(2006.11)
「女性器からでる分泌物を搾取するための器具」に関する情報。『実娯教絵抄』という江戸時代の艶本に「ペエコノインポ」の名称で唐にては、いん水をすひて腎薬にする道具として図が掲載されているという。
参考文献:性の秘本 ビジュアル編/鈴木敏文・著(河出文庫)
更に中国、韓国の春画。中国では昔、纏足(てんそく)といって、わざと女性の足を大きくしない風習がありましたが、これは女性器の締まりを良くするためと、簡単には逃げられないようにするためにも一役買っていたそうです。韓国の春画は絹に描かれており、その発色の鮮やかさは紙の比ではありませんでした。
さて、後半を先に見終わってしまったので、そのまま後半部分最後にある「すごくバカバカしい10分くらいで終わる映画」というのを見ます。簡単に言ってしまうと「AVのあのシーンだけを抜粋した物」です。
ということで、男女が出会うと次のシーンではもう性交していました。
冷え込む薄暗い館内に「あ〜」とか「あっ、ああ」といった類の女性のあえぎ声が響きわたります。確かにバカバカしい設定ではあったのですが、椅子に座りストーブにあたりながら、半強制的に見るビデオ。
「お願いだから、早くイッて終わってくれ」途中から画面の中の男に向かってそう念じてました。それぐらいこの10分間はかなり辛かった。
なんとか電気の配線も直って、本来なら最初に案内される前半部分へ。最初に出迎えてくれた男性が、先ほどの女性と同様の指示棒を持って案内してくれます。
まず入口を入ると、小さな神社とその周りにたくさんの木でつくった男性器が置かれています。栃木県には金精神社という神社があり、まずはその説明です。昔、かなり大きな男性器を持っていた僧侶がいて、彼は当時の孝謙天皇(女帝)と肉体関係にあったそうです。
しかし、天皇がなくなると彼は僧侶としての地位を脅かされ、この地を追われることになったのですが、その際に自分のあまりにも大きな男性器が邪魔で切り落としたというのです。その男性器を切り落とした場所が現在の金精神社なのだそうです。
その横の壁には神社にちなんで、数々の絵馬。どれも有名人のサインが入っています。性風俗を研究する人や大人向けの漫画を描いている漫画家の方々が訪れていたらしいです。今はなき深夜番組「11PM」の台本も飾られていました。
後半部分に比べるとあまり露骨に性を感じさせる物はなく、世界各国の性の神様の像や置物など、説明してもらって「あー、なるほど」と思われるものが多いです。また、性に関するお祭りについての説明では、自分の来た都道府県に応じて説明してくれます。
ただ単に展示物を見て歩くだけでなく、面白おかしく説明してもらって楽しめるため、30分という時間は結構あっという間です。
本来の順序通りなら、性的要素がだんだんと色濃くなる構成のようですが、自分の場合途中に挟まれた「10分間の映画」というのがかなり強烈で、前半部分がかなりインパクトの薄い部分になってしまいました。
もし、あなたが訪れた時に配線工事をしていたら、迷わず向かいのラーメン屋にいって餃子でも食べながら時間をつぶしてください。その方がより楽しめると思います。