かなまら祭

かなまら祭

かなまら祭以前から、生殖器をご神体とする祭りに一度行ってみたいと思っていた。
しかし、祭りというのは開催日が決まっているので、都合が合わないと行くことができない。

などと思っていたら、運良く「かなまら祭」に行くことができたので、今回は神社・仏閣番外編としてご紹介する。

イラストは、かなまら祭りポスターよりトレース。頭にちんこ乗せて浮かれてますよ。

若宮八幡宮かなまら祭京急・川崎大師駅で電車を降りると、乗客のほとんどが駅から数メートルの場所にある若宮八幡宮へと向かう。スゴイ人気だ、かなまら祭。

境内は既にたくさんの人でごった返していた。とりあえず、奥へ奥へと進んでいくと、ピンク色の巨大男根があった。秘宝館以外の場所で、こんなモノを目にしたのは初めてだ。ピンクのちんこを取り囲むように人が集まり、写真を撮ったり眺めたりしている異様な光景。

子供の頃「春になると頭のおかしい人が出てくるから、気をつけなさい」と、母親に言われたことがある。季節はちょうど春だが、ここにいる人は自分も含めて、また違った意味での「おかしい人」だと思う。たぶん。

かなまら祭かなまら祭ところで、商店街に貼ってあった「かなまら祭」のポスターには、『外国人からは「歌麿フェスティバル」と称して親しまれ、奇祭として国際的にも知られています。』と書いてあったが、確かに集まっている人の三分の一ぐらいは外国人だ。

日本に住んでいても、祭りになんて滅多に行かない。それなのに、わざわざ外国から見に来る行動力は、祭ビギナーとしては是非とも見習いたい。しかも、祇園祭のようなメジャーな祭ではなく、超マイナーな祭なのだから、尚更だ。

若宮八幡宮は、干拓事業の守護神として崇められている仁徳天皇を祀ってある神社だが、近年の再開発計画等によって移動してきた4つの神社が同じ敷地内に祀られている。この中の一つである金山神社のお祭りが、かなまら祭である。

金山神社に祀られているのは、金山比古神と金山比売神で、性と鍛冶屋の神様。別称が、かなまら様である。それ故に、のぼりにもちんこ、本殿脇にもちんこな場所だ。

しかし、祭のために境内はとにかく人が多くて、移動するのも一苦労。できれば混んでいない普通の日にもう一度訪れて、ご紹介したい。

かなまら祭人の多さと、気温20度という久々の暑さにぐったりしたので、境内を離れて食事をすることにした。「すし・天ぷら・うなぎ」と書かれた店に入ると、ほぼ満員。

ビールを飲みながら、男根祭りの西の大御所が、愛知県小牧市にある田縣神社の「豊年祭」だとしたら、東の大御所は「かなまら祭」だろう。外国人が「歌麿フェスティバル」と呼んでいるのは、男根→春画→浮世絵師→歌麿なのだろうか等々、とりとめのない話をしながら食事をしていたのだが、ふと気づくと店内には自分たち以外、誰もいなかった。

すると「御神輿が来ましたよ!!」と、お店の人が親切に教えてくれる。みんな御神輿を見るための場所取りに向かっていたのだ。祭りスキル高すぎ。恐るべし。もう帰るつもりでいたのだが、せっかくなので御神輿を見てから帰ることにした。

店の外に出ると、遠くでピンクの男根がゆらゆらと動いている。

かなまら祭かなまら祭巫女さんを先頭に御神輿の行列がやってくる。
何故か天狗登場。天狗と言えば「一本歯の高下駄」。そう思って足元を見ると、ちゃんと一本歯の高下駄を履いて歩いていた。素晴らしい!

ところで、何故にこの行列に天狗が登場するのか、自分なりに考えてみた。ちなみに行列の順番はこうだ。

金棒─若宮祭祀舞─道中奉行─川崎古式消防記念会─大麻─塩撒き─猿田彦─神官─御神酒─総代─来賓─参加者─かなまら講─エリザベス神輿─舟神輿─かなまら神輿

かなまら祭ここには天狗という文字はない。天狗は山の神様と言われるが、日本書紀に出てくる猿田彦大神という説もある。そのため「猿田彦」と書かれているのが、この天狗に該当すると思われる。猿田彦大神は道祖神である。道祖神は、悪霊の侵入を防ぐため村境・峠・辻などにまつられる神だが、生殖の神、縁結びの神ともされる。

これらを統合して色々考えたのが、生殖器をご神体とする祭=生殖の神でもある道祖神=猿田彦という図式。

ま、極端な結論としては、あの特徴のある鼻=ちんこというのが、一番だと思うが。

かなまら祭

一際目立つ「エリザベス御輿」

かなまら祭

黒光りする「かなまら舟神輿」

かなまら祭

小さいながら「かなまら大神輿」

ピンクの男根はエリザベス御輿と呼ばれ、その名前は女装クラブで有名な「エリザベス会館」から寄贈されたことによる。担ぎ手はピンクのはっぴを来たオカマと外国人。かけ声は「わっしょい」ではなく「でっかいまら!」「でっかいまら!」だ。しかも、女装に似合わぬ野太い声で。ちなみに「まら」とは「ちんこ」のことである、念のため。

「はとバスツアー」で行った歌舞伎町のオカマバーのトイレには、ドアのカギ部分にこんな感じのちんこが付いていたなぁ。と思いながら眺めていると、ふんどし姿の外国人男性が「ハズカシィ〜」と言いながら、金色に光る産毛の生えた尻を見せてきた。「ハズカシィ〜」ってアンタ、尻よりも前!前!玉がはみ出てるよ!!・・・うっかり余計なモノを見てしまった。

気を取り直して行列に目を戻すと、黒光りする男根のかなまら舟神輿、木の男根のかなまら大神輿が続いてやってきた。エリザベス御輿に比べると、男根の形はとても控え目だ。というより、こちらが「かなまら祭」本来のあるべき姿なのだろう。しかし何にしろ、真昼の往来を男根を担いで練り歩くのは、奇妙なことに変わりないのだが。

それにしても、スゴイ人だった。生殖器系の祭り巡りを老後の楽しみに考えていたが、今回あまりの人の多さに躊躇してしまうことが多かったので、先行き不安だ。あの人混みに打ち勝つには、バーゲンセールに突入するオバちゃん並みのパワーと図々しさが必要だ。老後の祭り巡りについては、もう少し真剣に考えないといけない。

そして、かなまら祭のような日本全国の「どーかしてるよ!?」という祭りを見て回り、「とんまつりJAPAN」 なる素敵な本を出されたみうらじゅんさんを、改めて尊敬する。