伊豆極楽苑

伊豆極楽苑

伊豆極楽苑

さてさて今回は、天城、修善寺といった中伊豆と呼ばれる場所。じゃ○んによれば、修善寺は中伊豆でも有数の温泉街があり、弘法大師によって温泉が開かれ、源頼朝が暗殺された場所らしい。

しかしながら、自分の中で修善寺は「伊豆の踊り子」=「川端康成」=「異常性愛」とかなり違ったイメージ。何がどうしてそうなのか、自分でもうまく説明できません。

さて、これだけ前置きが長い割に、これからご紹介するスポットには弘法大師も川端康成も出てきません。待ち受けるのは地獄と極楽。結構、丹波哲郎チックですね。

伊豆極楽苑国道136号をひた走り、土肥に向かう途中に現れるドライブイン。そこに隣接しているのが「伊豆極楽苑」。ピースしている赤鬼が看板を持って立っているのと、周りに目立った建物がないこともあり、小さいが怪しげな雰囲気を醸し出しているため、すぐにわかる。

「伊豆極楽苑」のパンフレットには「他では絶対見られない面白い来世観光 地獄極楽めぐりと歓喜神社 恋愛成就・夫婦和合の神 珍しい、面白い、伊豆名所」と書かれている。やたら長々しく、何が売りなのかインパクトがいまいちだが、伊豆=珍名所という図式ができあがっている感じを匂わせる文章。

伊豆極楽苑伊豆極楽苑一時期は、かなりTVや雑誌で取り上げられたらしく、入口付近にはテレビ出演?一覧やら、雑誌の記事が飾られている。これは、観光地によくありがちな「これだけ紹介されているんだから面白そうでしょ。入って見てみようよ」という揺動作戦なのか。

それに加えて右の看板である。中学とか高校の文化祭の看板みたいだ。このチープさが逆効果にならなければいいのだが...。自分はこれを見た途端、ちょっとばかり中の様子に一抹の不安を覚えた。

窓口でお金を払うと中は土足厳禁のため、体育館の入口みたいなところで靴を脱ぐ。正面には等身大の鏡があり「これが現世のあなたの姿です」。これから来世観光をするにあたって、自分の今の姿を覚えておけといったところか。

そして最近の自分にとって、最大の難関?である「撮影禁止」。ということで、今回もちょっとだけイメージ画。

扉を開けてもらい中に入ると、かなり広い畳敷きの和室である。畳に腰を下ろして説明を聞くことになる。中年の女性が静かにゆっくり、尚かつ流暢に、人間が死んでこの世とお別れしてからの四十九日の説明を始める。

「この世とお別れして、良い人、悪い人、普通の人、三つのコースがあります。良い人は極楽直行、悪い人は地獄へ直行。でも、大抵の人は良いことも悪いこともしてきましたから、審査をされます。審査の時間は四十九日。この間、来世が定まらないで彷徨っているのだそうです。」

ということで、俗に言う四十九日とは、死んでからの行き先が決まった時の供養なわけです。どうして四十九日なのかと言えば、七日間に七人の裁判官によって裁かれるからだそう。7×7=49ということです。

と、ここでどやどやと10人くらいの団体様が入ってくる。女性は団体様も床に座らせると続きを説明し始める。
「そこから先、ゆくべき道は六つ。地獄界、畜生界、餓鬼界、阿修羅界、人間界、天上界。最終的に行くべき道は自分で決め、自然とその道へと進んでいくのだそうです。」

それでは、ここで六道をご紹介。自分が行くべき道がどれになりそうか探してみてください。

地獄界殺生、窃盗、邪淫、邪見等、ありとあらゆる悪の限りをつくしていると地獄界。
畜生界食って寝て、飲んで寝てのグータラな生活をしていると畜生界。
餓鬼界欲張り、がめつい人、とにかく欲が深い人。死んでも苦しむ餓鬼界。
阿修羅界いつもイライラ怒ってばかりの人は、終始争い事ばかりの阿修羅界。
人間界またしても同じ人間へと生まれ変わることも。
天上界仏となって成仏できる、極楽浄土の天上界。ここはパラダイスらしい。

と、ここで説明が終わると団体様は残って四十九日の説明を聞き、 自分は全ての説明が終わったので次の間へ進むように言われる。「来世の観光へGO!」の矢印に従って薄暗い階段を上がっていく。

階段を上がるとブルーな薄ら寒い景色が広がる「三途の川」。ミニチュアの人形とジオラマで再現されている。渡る場所は三つ。山水瀬、江深淵、有橋渡。生前に善行が多ければ橋を渡れるが、行いが悪いと川に落とされて七日七晩流され、普通は大体浅瀬を歩いて渡るそうだ。

そして、またまた寒い感じの景色の「賽の河原」。幼くして亡くなった子供たちがうようよと彷徨っている。子供は石を積み上げようとするが、鬼に邪魔されるのだそう。東北にある賽の河原に、何で石が積み上がっているのか、子供のおもちゃが置かれているのかが何となくわかりました。

伊豆極楽苑「賽の河原」の隣には不気味なミイラみたいな人形が二体。「懸衣翁」と「懸衣嫗」というじいさん、ばあさんであり、三途の川を渡ってきた死者の着物を木の枝に掛けて、枝のしなり具合で罪の重さを量るのだ。

ここまでくると、思いっきりテンション下がりがち。学園祭の出し物にしては懲りすぎと思われるジオラマは、たまに人形の縮尺がどんなもんか?と思わせるが、テンションが下がった頭ではツッコミを入れる元気はない。

さて、皆さんもよくご存じの閻魔大王のお出ましである。閻魔大王の前にあるえんま帳には生前の行いが全て記されており、ウソをつくと「やっとこ」のようなもので舌を抜かれる。
それにしても人間はかなり小さく、鬼やら閻魔大王というのはとにかく巨大だ。

その後は先ほどの六道の世界の一部。阿修羅、人間、天上界は絵で描かれており、天上界においては伊豆アンディランドにあった丹波哲郎の「三界の世界」のイラストレーションに近いものがある。

餓鬼界では、先ほどまでの寒々しさとは一転して、何だか茶系統の汚らしい感じ。よく見れば「たべものは糞と尿」と書かれている。黄金聖水が好きな人ならともかく、勘弁してくれって感じだ。でも、人形は食ってる。あるいは「食べようとすると火になる」とのことで、電気仕掛けで火がつくように光る。う○こ食べて火傷して、とにかく大変そうだ餓鬼界。しかし、他にやることはないんだろうか?

伊豆極楽苑そして地獄界。地獄ってのはいろいろあるようで、よく言う「灼熱地獄」なんてのから、鬼に虫けらのようにいたぶられる「等活地獄」というのもある。何でも八大熱地獄というのがあり、それぞれに十六の副地獄があって全部で百三十六カ所。死んでも切り刻まれたり、煮たり、石に押しつぶされたり、木に吊されたり、とにかくこれでもかと阿鼻叫喚の地獄が広がる。

先ほどまでの死んだ直後の寒々としたブルーな世界に比べ、こちらは血と火による赤の世界。鬼は左のイラストみたくかわいくなく、もっともっと凶悪な感じ。

あー、地獄ってこんななのか、行きたくないなと思いつつ、テンションが上がらないまま出口へ向かう。ハワイアンチックな変な鬼が「あなたは今後地獄には縁がありません」と書かれた旗を持って立っている。全然説得力ないなーと思いながら、薄暗い階段を下りる。怪しげな暗い廊下を進むと、菩薩っぽい人形が立っている。

明るい光りが差し込む部屋へと踏み入れると、そこは天上界=極楽浄土。金ピカの五重の塔やら天女などで作られたジオラマが広がる。そして横には「温度ハワイと同じ。敷金礼金なし」とか書いてある。自分の中での極楽というか、この伊豆極楽苑の価値、一気に大暴落。今までの下がりがちなテンションはどこぞへ。

ふと足下を見ると、布のサイコロのようなものがある。それぞれの面に六道の世界が書いてあるので、試しに投げてみたところ、自分の行くべき道は「畜生界」であった。そういえば、畜生界だけ説明がなかったような...。まあ、牛か馬に生まれ変わって一日中食って飲んで寝てるんだったら、まあいいか。

ということで、ここで中は終わり。「秘宝殿」への張り紙に従って外に出る。

伊豆極楽苑建物の横の階段を上がると、二階は「世界中の愛の神々・秘仏・秘画コレクション」を公開している秘宝殿。18歳未満の方は入場できません。

この階段へと続く建物の脇には、Hな土産物が少ないが置いてある。女の子の水着が脱げちゃうボールペンとか、性器の形のキーホルダーとかその手のもの。そして「子供は触ってはいけません」と書かれた紙が貼ってある。だったら堂々と表に出さなきゃいいじゃないよ。

二階の秘宝殿はと言えば、インドやネパールのエロな神様の塑像やら、浮世絵、張り型とか、四十八手の人形などだが、とてもこじんまりしていて、ホントにコレクションの公開という感じ。

秘宝館を期待して行くと、かなり期待外れだと思われる。しかしながら、四十八手が1枚にところ狭しとごちゃごちゃと描かれた図は、なかなか圧巻。

余談ですが、四十八手を見る度にいつも思うのだけど「松葉くずし」とか「鯉の滝のぼり」とか昔の人のネーミングセンスの良さには脱帽。言葉選びがきれいです。

それから、観光バスが止まっていたのでうまく写真に収めることのできなかった「歓喜神社」。手前に2匹の白い象が、狛犬よろしく立っているが、塗料がはげ気味。縁結びの神様らしいが、地獄極楽、秘宝と続いた後だけに・・・うーん。どうしようもなく、中途半端にまともっぽく、中途半端に怪しげ。いまいちインパクトに欠ける。

それにしても伊東の「音無神社」、白浜の「白濱神社」、石廊崎の「熊野神社」と伊豆は縁結びの神様が非常に多い。恋人岬なんて場所もあるくらいだから、そろそろ伊豆=縁結びと、観光協会が一大改革を図ってもよさそうなもんだ。

さてさて、いまいちインパクトにかける珍名所。それでも「話のたねにチョットのぞいてみませんか」。