珍宝館
2014年07月追記。
珍宝館のご担当者からメールを頂戴しました。
新館を増築され、料金は現在1,000円だそうです。上記データを修正し、公式サイトのリンクも追加しました。
ご連絡ありがとうございました!ますますのご発展を心よりお祈り申し上げます。
秘宝館の東の大御所が「熱海秘宝館」ならば、西は伊勢の「元祖国際秘宝館」。しかし、秘宝館マニアだったら絶対に外してはならないお勧めスポットが、群馬県にある「珍宝館」だ。
ここの館長(ご本人曰く「マン長」)は女性で、しかも名前をちんこさんという。とにかくスゴイらしいという噂を聞いていた自分は、何が何でも彼女に会いに行くのだと以前から心に誓っていた。
ところで「珍宝館」を紹介する前に、この館長に関する噂とはどんなものかといえば、館長自らが案内をしてくれるが、とにかく饒舌。人のモノを濡れてるとか勃ってるとかのたまう。果ては触る。遠く離れていても急に「はい、勃起してー」と声をかける。誰も止められない。
行った人によれば「あのババアが・・・」というような表現になり、あまりいい話は聞かない。しかし、最後には「一度行ってみた方がいいよ。面白いから」と付け加えるのである。
ということで、やっぱり会いに行かなくては行けない。ジャパンスネークセンターでかなりゲンナリしたあと、群馬県を一路北上し珍宝館を目指した。
群馬県で有名な伊香保温泉。やはり秘宝館は温泉の近くにあり。「しいたけセンター」やら「おもちゃの博物館」なる看板に混じって「珍宝館」の看板が。ちょっとドキドキしながら到着。駐車場はかなり広く、観光バスが余裕で止められる。
ちょうど自分が着くと、観覧を終えたと思われる団体様がバスに乗り込んでいるところだった。「ああ、この人たちはどんな体験をしてきたのだろう」そんな思いで彼らを見送り、さて、である。
「珍宝館」と書かれた大きな石と、その横には男性器と女性器が合体したような怪しげな石。ここが入口かと思いつつ、その横にあるプレハブの建物で入館料を払おうとするが、誰もいない。仕方がないので、門をくぐり中に入ると、小さな庭が広がっていた。庭と言ってもほぼ全体が池であり、その周りに遊歩道らしきものがあるだけだ。そしてその奥に「珍宝館」なる建物がある。
建物の入口まで来ると、中年のオバサンが池を眺めていた。たぶん係りの人だと思い、中を見たいのだけど、入口に人がいなかったのでお金はどうするのか?というようなことを尋ねると「ここでもらいます」とのこと。入館料は800円也。
小銭がなかったので1000円札を渡すと、しばしお釣を探していたが見つからず「出口」とかかれた方へ歩いて行った。出口には「じいさんばあさん」をかたどったと思われる石像がある。何故だか、賽銭らしき小銭が置かれている。
と、彼女はその小銭の中から百円玉を選び出して手に取ると、戻ってきて「はい、おつり」と手渡した。おいおい賽銭から持ってきたよ、という感じでちょっと苦笑いの自分を見ながら「中に入って待ってて」と言い残してオバサンはどこかへ消えた。
果たして彼女はちんこさんなのか。素朴な疑問は頭を駆け巡るが、自分の想像するちんこさんはこうだ。ちょっと腰が曲がりつつも元気。そしてモンペに割烹着。そして、もっと、圧倒的に、ババアだ。
言われた通りに中に入る。どこかの美術館みたいな感じで、壁にそって絵画や彫刻なんかが置いてある。正面はガラス張りの展示ケース。中央が広々としていて、これで隅に芸術員みたいな人が座っていたら、まさに美術館だ。
でも、当然のことながら壁にかかっている絵画は、男女が絡み合う春画であり、展示されている品物といえば裸だったり性器をかたどったものだったりするわけで、美術館ではない。秘宝館、もとい珍宝館なのだ。
春画は、あまりに露骨だと猥褻物陳列罪という罪で罰せられることもあるから仕方ないが、申し訳程度に春画の結合部分が隠してある(写真の○で囲んだ部分)のもご愛敬だ。
しかも怪しげな観音様も置かれていたりする。きっと、性的なことを祈願するための観音様なんだろう。そんなの説明されなくても、なんとなくわかる。
中に入ったものの、ぼんやり突っ立っているのも馬鹿みたいなので、展示品を見て回る。だいたいどこの秘宝館にもあるような春画や性器のオブジェ。
ちょっと目を引いたのが、北海道でよく売っている木彫りの熊。木彫りの熊といえば、川でシャケをバホッと手ではたいた後、口にくわえて歩いていると言う感じのタイプが多いが、ここのは違っていた。やはり秘宝館なのだ。
男性器がついている。
それもかなりデフォルメされて大きく猛々しい。そのせいか、荒々しく立ちあがっている熊の顔が何だかマヌケだ。
一通りぐるっと見たが、オバサンが戻ってくる気配がなさそうなので、勝手に次の間へ移動する。
ここにはやっぱり春画と、木や石が男性器の形をしている、いわゆる御神体、御神木が置かれている。ここにも賽銭ありだ。そうそう眺めていても面白くないので、そのまま次の間へと移動する。
これまた春画のオンパレードだった。ガラス張りの展示ケースには、壁には春画、棚には御神木。春画が描かれた皿や器なども置かれている。
春画というと、今でいうエロ本のようなのを想像しがちだが、ちょっと違う。確かに描かれているのは男女の性行為が主で、たまにストーリー仕立てになっているのもある。しかし、その用途としては男性の自慰行為の促進剤というより、女性の嫁入り道具の一つだったのだ。
昭和初期ぐらいまでは十代前半でお嫁に行った。しかも、性的なことをオープンにすることがまず無かった時代だから、親も性行為について教えることもなく、娘を嫁に出す。
その時に、言葉じゃ言わないけど、見ればわかるだろってことで持たせたのが春画や、春画が描かれた皿や器なのだ。皿も裏返すと春画が描かれているという緻密さ。
いくつか秘宝館を巡っていると、自然とそういったことが身につく。日本の古き良き時代(?)を性的文化で体感できるのだ。ということは、秘宝館は古き良き時代(のアメリカ)をモチーフとしているディズニーランドに近いかもしれない。大人のテーマパーク。
話がかなりそれてしまったが、まだオバサンは現れない。いつの間にか、二組ほどのお客さんが館内にいた。後はもう出口に向かうのみとなってしまう。
面白くないので、展示してあるストーリー仕立ての春画を見る。色紙の一枚一枚に絵が描かれており、横に台詞が書いてある。しかもこの絵というのが、スポーツ新聞のエッチ面にある官能小説の挿絵みたいなのである。要は局部しか描かれていない。ご丁寧なことに、モザイクならぬ鳥の羽が、申し訳程度に局部を隠している。面白い。
ガラスにおでこをくっつけて覗きこみながら、台詞を声に出して読んでみる。「女『ああ、そんな。よして頂戴』、男『これは、どうだ?』」ってな具合である。結構馬鹿っぽい。しかし、後から入ってきたお客さんは、そんな自分を見ると避けるようにしてそそくさと出て行った。懸命である。自分も逆の立場だったら迷わずそうする。
何はともあれ、自分はちんこさんに会いに来たのだ。ここで帰るわけにはいかない。館内も一通り見たし、一度外に出てみることにした。 先ほど通ってきた庭には、築山のようなものがあり滝が流れている。
この滝がまたしても曲者だった。男性器の形の石から水が流れ落ち、女性器の形の石に水があたって池へと流れている。男性器は天然物っぽいが、女性器はどうみても作り物だった。あまりにも良くできているのだ。写真を撮って、築山に上ってみる。
しかし、それだけやってしまうと、もう何もすることがなくなってしまった。
考えた挙句、入口にあるプレハブのような小屋へ行ってみることにした。
小屋の中では、先ほどのオバサンがお菓子をほおばって、お茶を飲んでいた。
「すいません、中って案内してもらえないんですか?」ちょっと遠慮がちに、でもガイドがあることは知っているよ、という感じで声をかけてみる。オバサンは「はいはい」と、お菓子を全部口に入れてしまうと立ちあがり、小屋から出てきて自分の前を歩き出した。
「やった。案内してもらえる。ああ、この人がちんこさんだったんだ」実物は想像と違っていたが、内心ほくそえみながら彼女の後をついていった。ちんこさんは、どうやら先ほどのお菓子が歯に詰まったらしく、時折シーシーしている。
館内には一組のお客さんがいた。「さあさあ、お待たせしました。はじめますよ」建物に入るなりちんこさんがそう言うと、びっくりしたように振り返った。そんなことには構わずちんこさんは、一段高くなった壇上に上がる。いつのまにか手には指示棒を持っている。指示棒の先っぽは、言わずもがな男性器だ。
「私、ここの館長をしております「さがら ちんこ」と申します。ボランティアでこの仕事やってます」一瞬、案内してくれと頼んだ自分への当てつけみたいにも聞こえた。まあ、気にしない。最初に彼女は、壁に立てかけてあった木に手をかけた。木は二俣になっており、隙間にまた一本木がささっている。と、そのささっていた木を引きぬいた。恐るべし、木は男性器の形をしていた。そして何やら説明をした後、またズボッと元に戻した。
この説明の間、自分は彼女を観察していた。年齢はおそらく30代後半から40代前半と思われる。黒のTシャツに黒のパンツ。顔立ちは一時期世間を賑わせた「美容整形逃亡・時効寸前逮捕の福田和子容疑者」の逮捕時に似ている。
流れるような、それでいて引きずり込まれるような、そんなしゃべりには必ず「ち○ぽ」「ま○ちょ」という言葉が混じっている。果ては「あなた、今朝エッチしてきたでしょ。まだ股間になんか挟まっているような歩き方してるわよ」とまで言われた。残念ながら、自分はしてない。朝からヘビセンターに行ってきて脱力しているだけだ。
やや呆気にとられながら聞いていると、今度は一枚の皿を指示棒で示した。
「よく見て。般若のように見えるけど、実は女の人が絡み合ってます。さあ、何人いるでしょう?」みんな数えはじめる。「6人?」「6人かなー?」
「え、9人じゃない?」自分が答える。
「正解は**人。残念だったわねー、正解だったらハワイ旅行をプレゼントだったのよ」正解がいなかった時の、よくありがちなフレーズである。
「あなた9人って言ったわね。近かったからご褒美にいいものあげるわ、こっちにいらっしゃい」ちんこさんは自分にむかってそう言った。いいものって何だろう?電動コケシだろうか?断っておくが、普段は電動コケシがいいものだなんて思わない。秘宝館だからこそ考える。 しかし、自分の考えは予想外の方向に裏切られた。
「さ、前に出てきてズボン下ろしてパンツ脱ぎなさい。これ入れてあげるから」
涼しい顔をして、ちんこさんは言う。手に持っているのはバット2本分くらいありそうな太くて大きい男性器のオブジェだ。
自分が「いえ、いいです」と遠慮すると「あら、そうなの?気持ちいいのに」と言ってそれをしまい、替わりに男性器の形をした飴を手にした。「これはね、入口のお店でも売ってるから。サイズはS、M、L。あなたは最初はSからね。きれいに洗って乾かしてくれば、1週間以内なら返品可能。わかった?」「・・・。」「返事は?」「はーい」聞いているだけならまだしも、自分が参加させられ、自分に話題が及ぶとたまらなく恥ずかしい。しかし、そんなことは一向にお構いなしだ。
木彫りの熊はすっとばして、次は春画。
春画は先に述べたように、若くして嫁に行く女の子に、性行為を教える手本の役目もしていた。
「でも、今の若い女の子は初めてのときに、逆に男の子に教えてあげるのよね、入れるところはここよって。そうでしょ?返事は?」「・・・はーい」悪いが、自分は今時の若い子ではない。初めてのときに教えた覚えもない。それでも返事は「はーい」だ。
ガイコツの中に花魁(おいらん)が股を開いて座っており、その股の中へ男が千両箱を担ぎ入れている春画があった。
「女の股は何でも飲み込む。金も屋敷も田んぼも。男はそうやってどんどん身を持ち崩して、最後には骨までしゃぶられてガイコツになっちゃうのよ」 ふんふんと感心していると、またしても、ちんこさんは自分に向かって言った。
「あなたも今のお給料安いでしょう?股開いたら、その10倍のお金が簡単に入ってくるのよ。もし、今の仕事辞めてそうするんだったら、ここにいる人たちは安くしてサービスするのよ」何だか勝手に物事を決めている。
しかも極めつけはこれだ。「わかった?返事は?」「・・・はーい」
一通り説明が終わると、ちんこさんは相変わらずシーシーしながら、外へと出ていった。
案内してもらったのは、最初の美術館みたいな部屋だけだったが、それだけで十分だった。
一日にどれくらいのお客さんが来るのか知らないが、何度も同じ事を繰り返すのはパワーがいる。しかも、その時々でアドリブを交えて説明するのだ。 だから、ちんこさんは少ない人数相手で、説明したくなかったし、やりにくかったと思う。それでもちんこさんは、何だかとってもパワフルだった。すごかった。
できればもう一度行きたい。そして、ちんこさんに言われるのだ「あなた、また来たの?」。もちろんこう答える「はーい」。